刑事事件と民事事件の違い
弁護士が弁護を行う裁判には刑事事件と民事事件の2種類があります。
刑事事件は加害者(被疑者・被告人)に対して刑事責任を追及するもので、多くのケースで加害者側の弁護について検察と戦います。
民事事件は主にお金で解決できる紛争をするもので、法律と過去の判例を元に被告人・原告人の主張を弁護します。
刑事と民事は切り離して裁判を行う原則があり、刑事責任がある場合でも起訴されていなければ民事のみで解決(和解)することが可能です。
個人が告訴する場合は刑事裁判の訴訟を起こしても得られる費用のリターンが少ないため、民事だけで解決を目指すケースが多く、重大な事件では刑事と民事の双方で裁判を進める流れになります。
弁護士目線で刑事事件と民事事件の違いをまとめました。
刑事事件の場合
刑事事件は被疑者・被告人が任意で弁護士を選ぶ私選弁護人と国が選任して弁護士報酬も税金で賄う国選弁護人の2種類があります。
国選弁護人の場合は裁判による弁護が中心になり、弁護人の法的責任が妥当であるかを弁護し、罪の軽減や無罪を主張することが主な目的です。
私選弁護人は国選弁護人と同様の弁護をすることに加え、起訴前弁護として被害者に対しての示談交渉を代行する業務が多いです。
民事としての示談交渉で和解を目的にした交渉を行い、決裂したら裁判で争う流れになるため、私選弁護人は刑事事件・民事事件の双方を扱うことになります。
民事事件の場合
民事事件は弁護士の業務領域が多岐にわたります。
お金で解決する案件がメインになりますが、ほかにも離婚を巡る裁判の件数が多いです。
民事事件の主な事例をご覧ください。
ビジネス関連 | 業務威力妨害、著作権侵害など |
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雇用問題 | 労働基準法違反に対する会社への責任追及、残業代未払い請求など |
交通事故問題 | 賠償金の支払い等 |
離婚関連 | 不貞行為への慰謝料請求、親権を巡る争いなど。調停を経てから裁判(審判)に至るケースが多い |
相続関連 | 相続における財産分与など |
刑事事件関連 | 刑事事件における賠償金請求など |
債務整理問題 | 弁護士が扱うのは主に個人再生と自己破産 |
迷惑行為 | ストーカー関連、近所トラブルなど |
それぞれの分野で求められる弁護能力と経験、裁判を行う目的が異なります。
一部の弁護士は特定の事件を専門に扱って実績を残すことで、依頼の獲得に結びつけているケースがあります。
ビジネス関連では、訴訟問題が起こってから弁護士へ依頼するのではなく、企業と顧問契約を得てクライアントの抱えるトラブルを幅広く弁護することが多いです。
企業の顧問弁護士契約を結べば、裁判の弁護とは別に顧問料として継続した報酬を受け取れます。
弁護する側による違い
民事事件は原告側について賠償金請求をすることと、被告側について原告の求める要望に対して原告側の主張を弁護するかで状況が大きく変わります。
原告側の場合は、少しでも多くの賠償金を得られるように弁護するのが一般的です。
被告側の場合は賠償金の減額・賠償責任がないことの主張・逆に原告側の法的責任を追及する3つのパターンがあります。
いずれも過去の判例や憲法に則って、状況に応じて適切な主張をすることが大切です。
多くの弁護士は民事事件を好む
弁護士目線で見た場合、全体的に刑事事件よりも民事事件の弁護をした方が高額な報酬を得られるといいます。
刑事事件でも私選弁護で高収入を確保しているケースもありますが、相応の下積み期間が必要になります。
また、強い正義感を持って刑事事件を中心に扱いたい場合は法曹資格を取得して、検察や裁判官を目指す方が多いです。
法曹資格を取得して弁護士になる方の多くは、民事事件を多く扱って報酬を稼いでいくことを理想にしていると言います。
弁護士としての正義感や責任感から稀に国選弁護人として刑事事件の弁護を行う、もしくは民事事件の依頼が少ない理由で刑事事件を多数扱うようになるのが一般的な流れです。